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 ザステイツヨコハマ207号

特許権侵害 -侵害論 3 - 2  3  4  5 6 7    PATENT INFIRNGEMENT

技術的範囲の拡大

はじめに

 イ号が特許権侵害しているというためには、イ号が、特許請求の範囲の構成要件A〜Dを文言上充足している必要があります。
 
しかし、特許発明の本質にさほど影響を与えることなく、構成要件の一部を置換したり、削除したりして、文言侵害を避けようとする実施行為があります。
 
このような行為による発明として、均等物発明(均等論)、不完全利用発明、迂回・改悪発明があります。
 
法は、文言侵害よりも技術的範囲を拡大して、権利者をこのような発明からどのように救済しているでしょうか?

均等物発明による特許侵害(均等論)

提訴前の調査
趣旨

 侵害行為においては、文言侵害を逃れるために、特許発明を構成する要件
のうち、発明の発明たる所以の部分といえる本質的部分をそっくり模倣して、重要でない部分を他の構成に置き換える形が採られる場合が多々あります。
 このような行為を黙認するとすれば、社会一般の発明への意欲を減殺する
こととなります。
 しかし、発明を構成している個々の技術的事項の一部を新しい技術に置換したり結合の仕方を変えたりして新しい発明が生まれることが多いのも事実です。
 かかる点を考慮すれば、全ての置換行為を無制限に禁止すると、権利者の過保護だけでなく、発明の累積的進歩をも阻害することとなり、かえって、特許法の目的に反する結果となります。
 そこで、ボールスプライン軸受事件の最高裁判決において、均等論の適用を認め、その適用要件として、後述の5つの要件を課しました。
 この判決の結果、対象品等が特許請求の範囲の構成と相違していても、その相違が設計変更程度で且つ作用効果が同一なら、特段の事情(公知技術から容易に推考できる、審査過程での意識的除外)がない限り、均等とされ、特許侵害となる可能性が高くなりました。
 *関連判例:
  @ボールスプライン軸受事件最高裁H10判決-H6(オ)第1083号) 
積極的要件
(原告立証)
(1)非本質的部分
 :置換された部分が特許発明の本質的部分でないこと
  □本質的部分とは、「特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的
   部分(特許発明特有の作用効果を生じるための部分)」又は「特許発
   明特有の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的部分」
  □侵害行為が、発明の本質的部分をそっくり模倣することを目的として
   いることから、置換部分が、非本質的部分であるというこの要件は当
   然といえます。
  *関連判例:
   @注射方法事件大阪地裁H11判決-H8(ワ)12220号
   A海苔異物除去機事件東京地裁H12判決-H10(ワ)11453号
   B電話用配線盤事件東京地裁H13判決-H12(ワ)3157号
   C除放性ジクロフェナクナトリウム製剤事件
             (東京地裁H11判決-H8(ワ)14828号
   D食料品の加工調理機器事件大阪高裁H11判決-H10(ネ)2871号
   E印刷回路基板事件大阪地裁H16判決-H11(ワ)3012号
   F定容積比率混合容器事件大阪地裁H12判決-H11(ワ)6516号
   Gフィルムカセット事件東京地裁H12判決-H10(ワ)7865号
   Hプリント基板用治具クリップ事
               (東京地裁H16判決-H14(ワ)6035号
   I吊りボルト系着金具事件東京地裁平成H14判決-H13(ワ)24120
   J椅子式マッサージ機事件東京地裁H15判決-H13(ワ)3485号
   K遊離カルシユウムイオン濃度測定方法事件
               (東京高裁H14判決-H13(ネ)2296号
   Lフック事件東京地裁H13判決-H12(ワ)25830号
   M腹部揺動器具事件大阪地裁H13判決-H12(ワ)11470号
   N顆粒状ウィスカー事件東京高裁H15判決-H14(ネ)4293号
   Oカセット装填装置事件東京高裁H13判決-H11(ネ)855号
   P圧流体シリンダ事件名古屋地裁H15判決-H8(ワ)2964号
   Q施工面敷設ブロック事件東京地裁H17判決-H16(ワ)7716号
(2)置換可能性
 :対象品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成すること
  ができ、同一の作用効果を奏すること。
  □特許発明と同一の作用効果を奏しなければ、完全に別発明であり、侵
   害行為になりません。この要件も、上記非本質部分の要件と同様に当
   然の要件といえます。
   *関連判例:
   @海苔異物除去機事件東京地裁H12判決-H10(ワ)11453号
   A電話用配線盤事件東京地裁H13判決-H12(ワ)3157号
   B召し合せ部材取付用ヒンジ事件大阪地裁H12判決-H7(ワ)1110
   Cフック事件東京地裁H13判決-H12(ワ)25830号
   D屋根上配管の媒体液充填装置東京地裁H17判決-H15(ワ)18472
   E係止耐風平形瓦事件大阪地裁H17判決-H17(ワ)4204号
(3)置換容易性

 :置き換えることに、当業者が、対象品等の製造等の時点において容易
  に想到することができたものであること。
  □この要件の解釈は、重要です。
   全ての置換行為が適用されるわけでなく、置換行為が、例えば設計的
   変更などのように、容易な置換行為である場合にのみ、均等論が適用
   されます。
  □置換容易性の程度:
   発明の進歩性(特許法29条2項)よりも狭いです。
   特許発明と実質的に同一の範囲が置換容易の範囲であろうと考えられ
   ています。例えば、設計的事項の範囲等です。
   *関連判例:
   @海苔異物除去機事件東京地裁H12判決-H10(ワ)11453号
   A電話用配線盤事件東京地裁H13判決-H12(ワ)3157号
   B圧流体シリンダ事件名古屋地裁H15判決-H8(ワ)2964号
   C椅子式マッサージ機事件東京地裁H15判決-H13(ワ)3485号
   D召し合せ部材取付用ヒンジ事件大阪地裁H12判決-H7(ワ)1110
  □判断時:
   置換行為の容易性の判断時は、侵害行為時です。
   特許出願後に明らかになった物質や技術で容易に置き換えた場合だけ
   でなく、特許出願時に公知の物質や技術で容易に置き換えた場合も、
   適用されます。特許出願時において当業者にとって置換容易な場合は
   侵害時においても置換容易だからです。但し、この場合は、後述の消
   極的要件(4)との関係が検討されることとなるでしょう。
消極的要件
(被告立証)
(4)対象品等が出願時における公知技術と同一又は当業者が容易
  に推考できたものでないこと。
  □特許発明の構成要件を全て備えたイ号においても、新規性や進歩性が
   なければ、技術的範囲から除外されるのであるから(文言侵害の消極
   的基準(3)参照)、構成要件の一部が異なる対象品等が新規性や進
   歩性がなければ、当然に適用除外されるべきでしょう。
   *関連判例:
   @ソフトクリーム状食品サーバー事件
             (大阪地裁H12判決-H11(ワ)5526号
   A三脚脚立事件東京高裁H13判決-H13(ネ)2630号
(5)対象品等が出願手続時に意識的に除外されたものでないこと。
  □特許発明の構成要件を全て備えたイ号においても、意識的に除外した
   技術である場合には、技術的範囲から除外されるのであるから(文言
   侵害の消極的基準(4)参照)、構成要件の一部が異なる対象品等が
   意識的に除外されていれば、当然に適用除外されるべきでしょう。
   *関連判例:
   @召し合せ部材取付用ヒンジ事件大阪地裁H12判決-H7(ワ)1110
   A注射方法事件大阪地裁H11判決-H8(ワ)12220号
   B置棚事件大阪高裁H19判決-H16(ネ)2563号

不完全利用発明、迂回・改悪発明

不完全利用発明
特許発明の構成要件のうち、付加的構成要件を省略して実施する発明です。改悪発明の一態様ともいえます。
 *関連判例:
  @断熱材事件(福島地裁郡山支部昭S59判決-S57(ワ)166号
  Aブロック玩具事件(大阪地裁S43判決-S42(ワ)3553号)
  Bドアヒンジ事件東京地裁S58判決-S55(ワ)1971号
  
C緑化土壌安定剤事件知財高裁H17判決-H17(ネ)10056号
迂回・改悪発明

(1)迂回発明:
□ 特許発明と基本的に同一の技術思想に基づきながら、特許請求の範囲中の構成要件のうち、出発的要件と最終的要件を同一としつつ、その中間に技術的意味の無い不必要な変更を加えた発明です。均等物発明の一態様ともいえます。
(2)改悪発明:
□ 特許発明の構成要件のうち比較的重要度の低いものを省略(この場合は不完全利用発明と一致する)、又は置換したもので、特許発明の特有の効果を劣りながらも奏している発明です。
(3)関連判例:
  @写真シール自動販売機(プリクラ機)事件
          (大阪地裁H15判決-H14(ワ)5107号

  A地盤改良機事件知財高裁H24判決-H23(ネ)10060号

救 済

現 状

 イ号が特許請求の範囲の構成要件を文言上充足しない場合は、均等の要件を充足した場合にのみ例外的に技術的範囲に属するとして権利者を救済するが、改悪実施や迂回技術による場合には、特許権の侵害として認めないとする判決の方が多いようです。

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